量子ネイティブ 2020 3 1

書名 驚異の量子コンピューター
著者 藤井 啓祐  岩波書店

 量子コンピューターの実現には、
量子論を当たり前だと考える世代が、
つまり、「量子ネイティブ世代」が多数派にならないと、
その実現は、難しいかもしれません。
 物質は、粒子であり、波でもある。
もちろん、目の前にあるリンゴは巨大なので、
量子の性質を見ることはできませんが、
電子のような微小なサイズになってくると、
量子の性質が現れてくるのです。
つまり、電子が粒子になったり、波になったりするわけです。
不思議なことに、観測すると、粒子になります。
 たとえば、電子銃で電子を壁に向けて発射すると、
電子が波のように広がり、
壁に衝突すると、粒子になるかもしれません。
つまり、「壁に衝突する」と「観測する」は同じ意味です。
 このような不思議な世界を理解するのは、
古典物理学を学んだ私たちには無理があるかもしれませんが、
やがて、そういう世界を当たり前だと考える世代が台頭してくるでしょう。
つまり、「量子ネイティブ世代」の台頭です。
 もうひとつ不思議な話を書きましょう。
それが、「確率振幅」という考え方です。
量子力学は、「確率振幅」によって記述されます。
 「確率振幅」とは、数学の「確率」とは違います。
確率振幅とは、確率になる前の「確率の卵」のような存在です。
 たとえば、電子のような「量子的な粒子」を箱に入れたとします。
箱の中では、粒子は、波のような広がりになっているかもしれません。
 そこへ仕切り板のようなものを入れても、
粒子が右の部屋にいる状態が0.6、
左の部屋にいる状態が0.8という確率振幅になるかもしれません。
 「0.6+0.8」は、1.0にはなりません。
つまり、60%+80%は、100%にはなりません。
 なぜかというと、量子の性質として重なり合っているからです。
これは、量子の世界における「曖昧な重ね合わせ状態」を数値で表現するためです。
 もちろん、観測すれば、収縮して、粒子となりますので、
数学の確率の世界となります。































































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